研究課題
基盤研究(C)
本研究は分子標的薬剤を含む抗癌剤の感受性を担うDNA結合YB-1および、転移抑制遺伝子の一つであるCap43について乳癌特異的な発現に関する研究を発展させるものである。個々の乳癌患者におけるYB-1やCap43の機能を明らかにすることにより、乳癌の薬剤感受性と耐性に関する個別化診断と治療に加えて耐性克服にむけての新しい戦1略を提示することが可能となる。以下にYB-1とCap43に関する研究成果を報告する。1.乳癌において、YB-1の核内移行は悪性形質に関与している可能性があり、その機序としてはHER2-Pl3K/AktやER一αを介する経路が示唆された。これらの結果より、YB-1は乳癌の強力な予後因子になりうる可能性があり、また、新しい乳癌に対する分子標的として期待された。2.転移抑制遺伝子であるCap43/NDRG1が乳癌において抗エストロゲン剤の効果を評価する分子標的となるか否かを検討した。8種類の乳癌培養細胞株においてCap43とestrogen receptor(ER)発現に逆相関の関係がみられた。ER陽性乳癌細胞株ではEstradiol〔E2}投与によりCap43発現が抑制されたが、抗エストロゲン剤であるtamoxifen(TAM}を投与することによりCap43発現は再度増加した。ER陰性乳癌細胞株にER遺伝子を導入することにより、Cap43発現は抑制された。さらに、96例の乳癌症例において、ER蛋白発現とCap43蛋白発現は逆相関の関係にあった(p=0.0374)。以上より、乳癌においてCap43とERあるいはestrogenとの強い関係が示唆され乳癌に対する特異性の高い分子標的となることが示唆された。
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