研究概要 |
目的及び方法:stage III、IV胃癌切除標本より以下の項目について免疫組織染色を行った。その結果と患者予後との関係、腫瘍に対する免疫機構からのエスケイプ機構を明らかにすることにより、個々の症例に最も適した治療法を選択する(治療のテーラーメイド化)。 1.腫瘍特異抗原:MAGE,Lck 2.MHC分子:HLA-class-I,HLA-class-II,β2-microglobulin 3.リンパ球表面抗原:CD3,CD4,CD8 上記の染色を凍結標本およびパラフィン切片で検討し、対象とした進行胃癌は50例であった。また、コントロールとして正常胃組織、早期胃癌(m癌)組織を用いた。凍結標本とホルマリン切片との比較を行い、パラフィン切片で染織可能な条件を見いだし、以後その条件で施行した。 結果:1)進行度に伴い、HLA分子の欠失が見られ、また、それは病理固有組織学的悪性度にも比例する傾向にあった。2)胃癌組織のHLA分子欠失は、予後にも反映する傾向にあった。3)リンパ球表面抗原の結果についても、同様の傾向にあり現在解析中である。 考察:免疫能の低下した患者の予後は悪く、化学療法の程度(1回投与量と回数)も検討が必要と思われた。腫瘍特異抗原、MHC分子、リンパ球表面抗原の蛋白レベルでの発現を検討することは、簡便できわめて重要である。これらを総合して、予後指標とすることができれば、現在行われている抗癌剤などの治療方法、治療量の確立につながる。さらに症例数の追加により、本法が確立されるものと思われる。
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