研究概要 |
【概要】今年度はEG-VEGFの臨床組織における発現の局在と、既存のVEGF receptorの発現局在との関係、reguratorとしてのエストロゲンの発現局在との関係を検討した。またVEGF co-receptorであるNp-1,Np-2とVEGF ligand(-A,-B,-C,-D)、VEGF receptor(-1,-2,-3)の発現について検討した。 【方法】通常型膵癌症例より採取した膵癌組織および正常膵組織について、免疫染色によりEG-VEGF、VEGF receptor,エストロゲンの発現の局在を検討した。腫瘍内の膵癌細胞、炎症細胞、線維芽細胞をそれぞれ分離し、real-time PCRによりNeuropiline-1,-2とVEGF ligand, receptorのmRNAレベルでの発現との相関を解析した。坑Np-1、Np-2抗体を用いてこれらの腫瘍組織内での局在を検討した。 【結果】EG-VEGFについてはすべての症例で免疫染色による発現は確認できなかった。VEGF receptorはすべての癌組織において発現が認められた。エストロゲンは25例中14例で癌組織中に認めた。解析した全例の癌細胞でQ-PCR上VEGF-A, B, C, D, VEGFR-3,NP-1,Np-2の発現が認められた。炎症細胞、線維芽細胞からはVEGF-A,-C, Np-1の発現が認められたが、いずれも癌細胞に比べ有意に少なかった。免疫染色では、5例中2例で癌細胞、腺房細胞にNP-1,NP-2の発言が認められた。また、膵島細胞ではNP-2のみ発現が認められた。 【展望】現在はより高感度の抗EG-VEGF抗体の検索を行い、receptor、エストロゲンの発現局在の関係を解析する予定である。膵癌組織では、癌細胞、炎症細胞から複数のVEGF ligandとともにNp-1,-2が高発現しており腫瘍組織内での血管新生における重要なautocrine, paracrine cascadeを形成している可能性が示唆され、さらに解析を進める予定である。
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