研究概要 |
昨年度同定された,大腸癌結合ペプチド(bpCR),肝癌結合ペプチド(bpHC)に加え,本年度は,ヒト胃癌腹膜播腫マウスにファージライブラリーを腹注する手法により,ヒト胃癌腹膜播腫結合ペプチド(bpGCD)を同定した. このうち,bpHCについては,これを組み込んだファージベクターを作成し,実際の外科手術で摘出された肝細胞癌の新鮮標本に対し,ex vivoで投与した.その結果,コントロールのベクターに比べ有意に多く癌部に結合することが確認された.この一連の研究については,既に英文論文投稿中である. 次に,bpCRについては,静岡県立大学薬学部奥直人教授らと共同で,このペプチドを組み込んだ抗癌剤キャリアー・リポソームを作成した.このリポソームの大腸癌への集積性をマウスモデルで測定したが,コントロールリポソームとの間で癌集積性に明らかな有意差を認めず,これについては,別のリポソーム作成技術を導入し,追加実験中である. 一方,bpGCDについては良好な実験結果が得られた.BpGCD組込みリポソームを作成し,これを胃癌腹膜播腫マウスに腹腔内投与すると,コントロールのリポソームに比べ有意に多く播種組織に集積する一方で,正常臓器(肝臓,腎臓など)には有意に少なく集積した.つまり播種への選択的集積性が確認された.さらに,このリポソームに抗癌剤アドリアシンを封入し,in vitroで癌細胞に投与すると,コントロールのリポソームに封入した抗癌剤に比べ,有意に細胞増殖を抑制した.この研究結果については,英文雑誌に投稿中である. 以上の研究成果については,別紙のごとく,特許申請を行った.さらに,第13回DDW Japanシンポジウム(神戸,10月6日),第60回日本消化器外科学会シンポジウム(東京,7月20日),第91回日本消化器病学会シンポジウム(東京,4月14日)等で発表し,科研費補助を受けた旨広告した.
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