研究概要 |
5アミノレブリン酸(ALA)内服光線力学的治療(ALA〜PDT)を下咽頭がんと胃がんの2例で臨床応用を開始した。下咽頭がん患者は放射線療法後の局所再発例で、胃がん患者は胃幽門前庭部に生じた腺腫内がん例である。ALA30mg/kg内服5時間後にエキシマダイレーザー装置EDL-1を用いて病変部に経内視鏡的に80J/cm2のレーザー照射を行った。レーザー照射後の経過は下咽頭がん症例では病変部に浅い潰瘍形成を認め、28日後の生検標本の病理診断においてCRと判定された。一方胃がん症例では病変部に腫脹、発赤の変化を認めたが潰瘍形成には至らず、28日後の生検標本の病理診断において悪性細胞の遺残が認められ、SDと判定された。ALA内服による副作用は軽度の肝酵素(GOT, GPT)の上昇を認めたが、経過観察にて7日後には正常値に復した。SDの胃がん症例に対してアルゴンプラズマ凝固装置によるレーザー照射を追加照射したが、その後の生検で一部癌の遺残を認め、現在2度目の追加治療を予定している。胃がんにALA-PDTが無効だった原因としては1.下咽頭がんは扁平上皮がん、胃がんは腺がんと組織型が異なる、2.ALAの用量が不十分、3.照射レーザーエネルギー量の不足、4.腺腫の混在が考えられる。現在、ヒト胃がん由来の腺がんをヌードマウスに移植し、ALA-PDTの腺がんに対する効果を検討する基礎実験を開始した。
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