研究概要 |
5-アミノレブリン酸(5-ALA)による光線力学的治療(PDT)を3例(下咽頭癌1例、胃癌2例)で行い、PR1例、SD2例であった。5-ALA投与量が30mg/kgであったため、増量により抗腫瘍の増強が期待できたが、GOT,GPTが投与直後から200以上に上昇したため、増量は危険と判断した。動物実験に戻り、5-ALA・PDTの抗腫瘍効果を検討した。ヌードマウス背部皮下に移植したヒト胃癌MT2に対する5-ALAとフォトブリンのPDTによる腫瘍退縮率を比較すると5-ALA:0.40、フォトブリン:0.16と有意差(P<0.05)をもってフォトプリンPDTの優位性が立証され、5-ALA・PDTの臨床導入を断念した。光線過敏が軽度な光増感剤としての新たな候補を探索し、レザフィリン(NPe5)の消化管癌に対するPDTの抗腫疵効果について基礎的検討をした。ヌードマウス背部皮下にヒト胃癌株MT2を移植した。NPe5:10mg/kgを静脈内投与2時間後にダイオードレーザー装置にてPDT(620nm,80J/cm^2)を施行した。対照群は生理食塩水の静脈内投与とした。5-ALA PDTとの比較試験ではPDT7日後のCR率は5-ALA:0%(0/5),NPe5:80%(4/5)であり、NPe5 PDTの強力な胃癌に対する抗腫瘍効果を有意に認めた。レーザー照射のみの対照群との比較ではPDT14日後の評価でのCR率は対照群:0%(0/8),NPe5:87.5%(7/8)と良好な坑腫瘍効果を確認できた。長期観察ではNPe5 PDTでは3週間以内に87.5%(7/8)のCRを得られ、その後局所再発は確認されなかった(観察期間12週)。NPe5 PDTのヒト消化管癌に対する抗腫瘍効果がin vivoで始めて確認された。
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