研究概要 |
胃癌,大腸癌,膵癌細胞株とマクロファージ系細胞株の共培養の系で癌細胞の遊走能・浸潤能ともに上昇を認めた。共培養系においてマクロファージ系細胞株のRANTESの発現上昇、RANTES受容体であるCCRの発現を認めた。また、RANTESはdose-dependentにMMP-9の発現を誘導することも確認され。以上より、癌細胞の浸潤は間質細胞との協調作用によって成し遂げられている可能性が考えられ、そのKe ymediatorのひとつとして、RANTESが考えられた。そこで、RANTES抗体添加による浸潤能抑制実験を行ったところ、癌細胞株の浸潤能は約50%に抑制された。この結果から,癌細胞の浸潤能獲得過程においてRANTESは重要なケモカインであると考えられると同時に,完全抑制されなかったことから,他の因子の存在も考慮するする必要があると考えられた。その現象を解明するために、胃癌細胞を用い、マイクロアレイ法による遺伝子発現解析や文献的検索から予測される因子を選定して解析を行ったところ、RANTESの他にHGF、LTB、PGE1などの関与が予測された。HGFはc-metに結合し、細胞の遊走能を上昇させているものと考えられ、さらにLTBは間質細胞の遊走因子であることから、生体内では腫瘍細胞と間質細胞の相互関係をより増強することが予測される。PGE1はMMP-2の発現を誘導することが報告されていることから、癌細胞の浸潤能獲得においてきわめて重要な役割を担っているものと思われる。癌細胞と間質細胞の相互関係は、in vitroの実験系においては癌の浸潤に正に働くことが多いように思われたが、間質細胞のサロゲートとして使用したTHP-1における結果であり、実際の生体の中で間質反応が癌の進展にどのように関わっているかについては、臨床検体を用いた研究が今後必要になってくるものと思われた。
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