研究概要 |
1.DNA chip解析により、osteopontin (OPN)が膵癌高肝転移株HPC-3H4で高発現していることが明らかとなった.またELISAによりHPC-3からHPC-3H1、HPC-3H2、HPC-3H3、HPC-3H4まで肝転移率の上昇に比例したOPN発現の段階的上昇を認め、OPNが肝転移に何らかの関連があることが示唆された. 2.OPN発現ベクターを作製し、膵癌低肝転移株HPC-3に導入し、OPNをHPC-3H4とほぼ同等に高発現する細胞株HPC-3(OPN)を作成した,HPC-3、HPC-3H4、HPC-3(OPN)をそれぞれヌードマウス脾臓内に接種し、一定期間経過後の肝転移率を検討したが、HPC-3H4はほぼ100%の転移率を認めたが、HPC-3(OPN)はHPC-3と同程度の低転移率にとどまった. 3.一方、転移抑制の試みとして、OPNが高発現している高肝転移株HPC-3H4にsiRNAを発現するベクターを導入し、mRNAレベルでの転移阻害効果を検討した.ELISAによりOPN分泌がHPC-3程度に低下した細胞株HPC-3H4/miR-oPNを作成した.HPC-3、HPC-3H4およびOPN発現を抑制したHPC-3H4/miR-OPNの転移率はそれぞれ0%(0/8)、100%(8/8)、25%(2/8)であり、OPNの発現阻害による転移抑制効果を認めた. 4.高肝転移株HPC-3H4を用いて、OPN中和抗体による肝転移抑制効果を検討したところ、コントロール群では100%(10/10)の肝転移率であったのに対し、中和抗体群では、50%(5/10)と著明な肝転移抑制効果を認めた. 5.以上の結果より、RNAiおよび抗体によるOPN阻害が膵癌肝転移を抑制した.予後不良な膵癌治療成績の向上のため臨床応用に向け重要な結果であると判断した.
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