研究課題
基盤研究(C)
「膵癌の転移浸潤におけるシグナル伝達系の解明」について、これまでにわれわれが得た結果を以下に報告する。ヒト膵癌培養細胞として、高肝転移株群(BxPC-3、SW1990)、非転移株群(CaPan2、PaCa-2)の4種を実験に使用した。1)4種すべての膵癌細胞株で、AP-1のsubtypeであるc-jun mRNAおよびc-Jun蛋白が発現している2)AP-1活性は膵癌細胞株間で差があり、肝転移能に関連していると考えられる3)c-Junのリン酸化酵素であるc-Jun N-terminal kinase (JNK)を活性化することにより、c-Junを活性化させるとされる薬剤MT-21を膵癌細胞に作用させ、AP-1活性の変化をGelshiftassayを用いて検証したところ、AP-1活性はMT-21の濃度依存性に上昇した。4)膵癌細胞にMT-21を作用させて増殖能を検証したところ、MT-21濃度依存性に増殖が抑制された。5)膵癌細胞にMT-21を作用させて、Matrigelに対する浸潤能をInvasion assayを用いて検証したところ、MT-21濃度依存性に浸潤能が阻害された。6)臨床検体におけるAP-1発現を、免疫組織染色を用いて調べ、実際の症例の転移浸潤とAP-1発現についての関連を検証したが、はっきりとした関連は見出せなかった。以上より、MT-21がAP-1活性化を介して膵癌細胞の増殖浸潤を抑制することが明らかとなったが、実際の膵癌検体における検証では、膵癌とAP-1との関連が見出せなかった。今後はAP-1が実際の膵癌でどのような役割を果たしているかを鋭意検討していく予定である。
すべて 2006 2005
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