研究概要 |
【目的】平成16年度の検討で、大腸癌におけるRECK遺伝子発現と臨床病理学的因子、予後との相関の有無を明らかにした。平成17年度は、VEGF,CD34といった血管新生関連因子の発現を調べ、RECK発現との関連性を検討することにより、その機序解明に迫った。 【方法】(1)平成16年度に得られた大腸癌症例の凍結切片を用いて癌部でのVEGFの発現、およびmicro vessel density (MVD)の評価として、抗CD34抗体による免疫組織染色をおこなった。免疫組織染色法の詳細は平成16年度と同様であり、ABC法でおこなった。用いた一次抗体は、抗VEGF、抗CD34抗体として、それぞれC-1,1:50; Santa Cruz, Biotechnology, QBend, 1:50, DAKOを使用した。(2)RECKとVEGF, CD34発現との相関を検討することにより、RECK発現と血管新生との関連を評価した。それにより、いわゆる"angiogeneic switch"systemにおけるRECK遺伝子発現の関与を考察した。 【結果】(1)非癌部大腸粘膜ではVEGF発現は認められなかったが、癌部では特に細胞質、細胞膜に発現が認められ、26.4%(14/53)が強陽性であった。RECKとVEGF発現には負の相関関係が認められた(p=0.0037)。(2)RECK高発現群ではMVDは160±21(mean±SD)であったが、RECK低発現群においては、265±28と、MVDとRECK発現との間には負の相関関係が認められた(p=0.006)。 【総括】RECK/MMP balanceは大腸癌における重要な予後規定因子であった。その機序として、RECKは癌部におけるVEGF発現を減弱させることにより、腫瘍の血管新生を抑制していることが示唆された。
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