研究概要 |
平成17年度は,これまでに以下の結果を得た. 膵癌における間質の役割を明らかとするために,Programmed Death-1 (PD-1) Ligand-1 (PD-L1)およびLigand-2 (PD-L2)の発現,さらにTWEAK-Fn14の発現を各モノクロナール抗体に用いて,膵癌切除標本において免疫染色を行った.その結果,膵癌腫瘍とともに腫瘍内間質に各々の発現を認めた.したがって,これらの分子が膵癌の発生および増殖に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された.すなわち,PD-L1,PD-L2の発現は腫瘍応答性の免疫担当細胞に機能を不全を起こさせている可能性が示唆された.これまでの報告では,腫瘍侵潤T細胞にアポトーシスが誘導されることが明らかとなっているが,膵癌においてもその可能性がある.また,マウス同系癌種皮下接種モデルにおいて,また抗PD-L1抗体や抗TWEAKあるいはFn14抗体によるin vivoにおける腫瘍増殖抑制実験を行った.その結果,抗体投与により,対照群に比べて,有意に腫瘍の増殖は抑制された.抗PD-L1抗体による治療実験では,腫瘍内の免疫活性の上昇がみられた.さらにTWEAK-Fn14の発現は,腫瘍細胞の増殖さらには血管新生に関与している可能性が示唆された.これまでに血管新生が膵癌切除後の予後と有意に関与することをわれわれは報告してきているが,さらにTweak-Fn14もこのシステムに関与している可能性があり,今後さらに研究を進行し、機序を明らかとすることを試みる.
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