研究概要 |
膵癌の治療成績向上には、集学的治療の進歩に加えて、個々の症例の生物学的特性を事前に把握し、それに対する最良の治療を選択するテーラーメイド治療の進歩が重要である.ヒトゲノム解析がほぼ完了し、発癌と遺伝子異常の関連に関しの知見が集積しつつあるが、多くの遺伝子の機能はいまだ不明な部分が多い. 今回の検討では、実際の膵癌および胆道癌の手術検体を用い、gemcitabineおよび5-fluorouracilに対する感受性を定量的に検討した.また、膵癌症例のgemcitabine感受性群とgemcitabine耐性群での遺伝子発現の差違をマイクロアレイ法で検討し、gemcitabine感受性関連遺伝子を同定した.これら臨床的検討と平行して、複数の膵癌培養細胞系を用いて5-fluorouracilおよびgemcitabine耐性株を作成し、それぞれの親株との遺伝子発現の差違を同様にマイクロアレイ法で検討した.その結果、抗癌薬(gemcitabineおよび5-fluorouracil)耐性、感受性関連遺伝子の候補として、RAD1,HUS1,RFC5,RPA3,CHK2 genes,TYMS,UP1,PCNA,FEN1,TRAF2,GADD45B,TIA1,BIRC5,microsomal glutathione S-transferase 1(GSTT1),topoisomerase II alpha(TOP2A),caspase 3,ATP-binding cassette and sub-family C member 2(ABCC2)の18遺伝子(群)を同定した. 今後は、これら18遺伝子(群)をターゲットとしたマイクロアレイを作成し、臨床膵癌例での発現と抗癌薬感受性・耐性の関連性を検討し、臨床応用を進めたい.
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