【目的】胃切除術後の患者では食欲が低下し、体重が減少する.一方、グレリンは胃底腺から主に分泌され、食欲亢進作用を持つ消化管ホルモンとして知られている.これまで、胃切除術後の体重減少が周術期には体蛋白質の異化であるのに対し、術後長期には体脂肪の減少であることを明らかにしてきた.そこで、胃切除術後の体重減少におけるグレリンの関与について検討した. 【方法】胃癌に対し幽門側胃切除DG(16)、胃全摘術TG(10)を行った患者の周術期および術後1年の体成分分析を行った.また、周術期の血清グレリンを測定した. 【結果】周術期の体重減少はDG3.5kg、TG4.0kgであった.筋肉量は共に2.3kg、脂肪がDG1.0kg、TG1.5kg減少した.DGでは退院後筋肉が増加し、術前と1年目の体重に差がなかった.TGでは退院以後筋肉の減少はなかったが、脂肪量が5.2kg減少した(p<0.01).術前のグレリンは活性型6.3±6.6fmol/ml、デスアシル型61±32fmol/mlであった.退院後の体組成変化を比較すると、体重、筋肉量、脂肪量ともにTGで少なかった(表).術後の血清グレリンもDGでは術前と差がなかったが、TGではDGに比べ減少した. 【結語】胃切除後血清グレリン濃度はDGでは術前と差がなかったが、TGでは減少した.退院後の体組成変化でもDGで筋肉量が増加したのに対し、TGでは筋肉に差はなかったが、体脂肪が減少した.胃全摘術後の体重減少にグレリン低下による食欲の低下が関与していることが推察された.
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