グレリンは胃底腺から主に分泌され、食欲亢進作用を持つ消化管ホルモンである.一方、噴門側胃切除(噴切)には胃底腺領域が多く含まれ、機能温存のために胃を1/2温存することが必要とされる.そこで、噴切の機能評価を幽門側胃切(幽切)、胃全摘(全摘)と比較した. 対象と方法:2003年1月から2004年6月までに日本医科大学付属病院消化器外科(第I外科)において胃切除を行った胃癌を対象とした.腹腔鏡補助下噴切をU領域のIA期早期胃癌12例に対して行った.再建は食道残胃吻合+噴門形成(10)またはダブルトラクト(2)とした.幽切(70)、全摘(53)を対照とし、血清グレリンおよび体成分測定による体重変動を評価した.患者の周術期および術後1年目の体成分分析(体重、筋肉量、脂肪量)を行った.周術期および1年目の血清グレリンを測定した. 結果:墳切と幽切の手術時間は306、270分、出血量164、124gで、術後入院期間は10.4、10.1日と差がなかった.しかし、術後6ヵ月後のグレリンは42±18、67±37と噴門側胃切除で減少していた(P<0.05). また、体重も墳切で6.5±2.5kg減少したのに対し、幽切では3.0±2.0kgであった(p<0.05).墳切で減少した体成分は主に脂肪4.8±3.0kgであった. まとめ:腹腔鏡胃切除では術後回復が速いことから適応が拡大されてきた.噴切後グレリン濃度は術前から減少するが、全摘よりも高かった.噴切後の体重減少は幽切より大きいが、胃全摘よりも少なかった.噴門側胃切除では1/2以上胃を温存することにより消化管内分泌機能が保たれ、体重の減少が少ないことが示唆された.迷走神経にあるグレリンの受容体を温存することにより、食欲等の機能を温存することが出来るかもしれない.
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