研究概要 |
脂肪肝は虚血再潅流障害(ischemia-reperfusion (IR) injury)に脆弱で、対策法としてIschemic preconditioning (IPC)が提唱されているが、ミトコンドリアプロテオームに与える影響はいまだ不明である。本研究では、IPCがどのようにミトコンドリアプロテオームに変化を与えるかを検討した。 脂肪肝Zucker ratを使用して、25分間の肝門クランプを施行した(IR群)。IPC群として、10分間の肝門クランプと10分間のreperfusionを施行後に25分間の肝門クランプを施行したモデルを作成した。24時間後に再開腹して肝切除を施行した。ミトコンドリアのプロテオームを蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(two-dimensional difference in-gel electrophoresis;2D-DIGE)により解析した。 ミトコンドリア内膜電位はIR群に比較してIPC群で高値であった。しかし、ミトコンドリア内グルタチオン濃度はIPC群で逆に低値であった。IPC群ではIR群に比較して、mitochondrial precursor of aldehyde dehydrogenase 2とalpha-methylacyl-CoA racemaseの発現が有意に高値であった。一方、IPC群ではIR群に比較して60S acid ribosomal protein P0,carbonic anhydrase 3,arginase 1,superoxide dismutaseの発現が有意に低値であった。 今回の研究では、脂肪肝の虚血再灌流障害に対してIPCが保護作用を有するという結果は認められなかった。しかしながら、IR群と比較してIPC群では2つのミトコンドリア蛋白が有意にup-regulationを示し、4つのミトコンドリア蛋白が有意にdown-regulationを示し、IPCがミトコンドリア蛋白のmodulation機能を有することが確認された。
|