研究概要 |
[目的]肝病態モデルとして臨床上遭遇する頻度が高く、その対策に難渋する病態である劇症肝不全モデルにおいてPirfenidoneの生体保護効果を検討する。 [方法]250g前後のSD系雄性ラットを使用し、陰茎静脈よりlipopolysaccharide(LPS)1.5mg/kgおよびD-galactosamineを静脈投与し、劇症肝不全モデルを作製する。LPS/D-galactosamine投与30分前にpirfenidone300mg/kgを経口投与し、コントロール群は0.5%carboxymethylcellulose2mlを経口投与する。LPS/D-galactosamine投与後の両群における生存率を検討する。生存率においてPirfenidoneの効果が認められれば、LPS投与1,3,6時間後の生化学項目を測定し比較検討する。 [結果]Pirfenidone群、コントロール群ともラット約20匹でのLPS/D-galactosamine投与後の生存率の比較検討を行った(基礎実験としてPirfenidoneの投与時間、投与量も検討した)。コントロール群はLPS/D-galactosamine投与後48時間以に全例死亡した。Pirfenidone群は半数(10匹)が48時間生存したが、統計学的有意差は認められなかった。追試実験として各群10匹ずつ同様の検討を行ったが、両群において統計学的な有意差は認められなかった。LPS投与後1、3、6時間でのAST、ALT、LDHの変動および炎症性サイトカイン(TNF-alpha,IL-1beta,IL-6,IL-10,IFN-ganma)、ケモカイン(CINC,MIP-2)を比較検討を行い、LPS投与後6時間でのALT,CINCの上昇のみをPirfenidoneは有意に抑制した。 [考察]ラット劇症肝不全モデルにおいてPirfenidoneの生体保護効果は認められなかった。しかしLPS投与後の経時的変化において、一部生化学的項目においてPirfenidoneの生体保護効果が認められた。研究期間は終了したが、今後も同劇症肝不全モデルにおいてPirfenidoneの投与時間、投与量などを検討し、Pirfenidoneの生体保護効果を検討する予定である。
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