・実験1 ラットを用いた副作用の確認 直径0.1〜20μmの蛍光ビーズ2mlをラット尾静脈に静注し全身状態、組織所見を観察した。ビーズの直径により0.1、0.5、1.0、10.0、20.0μmの5群にわけ、それぞれ6匹、計30匹で3週間観察した。死亡例はなかった。全身性の副作用は全く認めなかった。剖検にて肝、腎、肺に線維化、塞栓、壊死、浮腫などの変化は認めなかった。 また、ラット背部の皮下に長径1.0μmの蛍光ビーズ1mlを投与し、1時間、6時間、24時間、3日、7日に屠殺し局所の組織反応について観察した。それぞれ6匹、計30匹とした。肉眼的に著変はなかった。組織学的には、投与した局所に軽度の浮腫と炎症反応を認めるのみであった。 ・実験2 ブタを用いたセンチネルリンパ節(SN)同定の可能性の検討 全身麻酔下のブタに経口的に内視鏡を挿入し、食道および胃の粘膜下層に蛍光ビーズ5mlを注入した。蛍光ビーズの長径は0.1、0.5、1.0、10.0、20.0μmの5種類を用いた。引き続き開胸開腹を施行した。食道、胃、小腸、大腸の漿膜側から蛍光ビーズを注入した(食道、胃に関しては、先に粘膜下に注入した部位とは異なる場所に注入した)。UVランプ(365nm)で照射し発光するリンパ管とリンパ節を経時的に観察した。施行したブタ6匹中、食道、小腸では5匹でSNの同定が可能であった。胃、大腸では1例でSNが同定された。直径1.0μm以下の蛍光ビーズでは、注入後約20分でリンパ管とリンパ節が発光し、観察した6時間内に発光強度が減弱する事はなかった。逆に、10.0μm以上の粒子径の蛍光ビーズでは6時間内にリンパ管、リンパ節内への流入を認めなかった。 以上の結果から蛍光ビーズをtracerとしたSNの同定は可能であり、粒子径は1.0μmが適していると考えられた。 現在、当院IRBの了解のもと、臨床への応用へと移っている。
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