研究概要 |
腹膜播種に対する分子標的治療の可能性、有用性につき検討を行うため、平成16年度は未分化型培養細胞株MKN-45とMKN-45を親株として樹立した高頻度腹膜播種株MKN-45Pの比較検討をin vitroおよびin vivoにおいて行った。また、Stage II漿膜浸潤陽性胃癌におけるVEGF, MMP-2の発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、MKN-45Pを用いた腹膜播種モデルは有用であり、VEGFは腹膜播種治療に対する有効な分子標的治療のターゲットになりうると考えられた。平成17年度は腹膜播種モデルを用いて、MMP阻害剤、VEGF阻害剤を投与し、その有用性を判定した、MMP阻害剤投与群は、0,1%OPB3206混餌投与し、血管新性阻害剤投与群は200μgAVASTINを4日間毎に腹腔内投与した。投与後3週目にマウスを犠死せしめ、体重、腸間膜の転移結節数、腹水量を測定した。後腹膜組織の組織学的観察および核分裂指数を求めた。また、生存率も求めた。OPB3206投与群では転移結節数、腹水量、体重いずれもコントロール群と有意な差は認めなかった。AVASTIN投与群では転移結節数、体重はコントロール群と有意差はみとめなかったが、腹水量の有意な減少を認めた。50%生存期間はOPB3206投与群では26日に対してコントロール群では12日、AVASTIN投与群では30日に対して、コントロール群では25日と両治療群共に有意差を認めた。組織学的には両コントロール群では、後腹膜に著明な播種による水腎症を認めたが、両治療群ともに後腹膜の腹膜播種および水腎症の程度は軽度であった。核分裂指数はOPB3206投与群は8.3±3.4,AVASTIN投与群は9.6±2.1、コントロール群はそれぞれ22.1±4.5,21.0±5.7であり、両治療群ともコントロール群に比較し有意に核分裂指数は低値であり、増殖活性の有意な抑制を認めた。以上よりMMP阻害剤および血管新性阻害剤は胃癌腹膜播種の分子標的治療薬として有用と考えられた。平成18年度以降は腹膜播種モデルにおける組織上の腫瘍血管数の治療群とコントロール群の差、MMP-2,MMP-9,VEGF, VEGF-Cの発現の差およびアポトーシスについて検討を行う予定である。
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