研究概要 |
[方法]当科で樹立した食道癌培養細胞株(KEシリーズ,KE-3〜KE-10の8種)を用いて以下の検討を行った. 1)connexin(Cx)遺伝子,蛋白の発現: RT-PCR, Western blot analysisにて発現を調べた.2)培養細胞株へのCx遺伝子の導入: Cx32遺伝子を導入した.3)ギャップ結合を介する細胞間相互作用(gap junctional intercellular communication,以下,GJICと略記)の測定: dye transfer assayを用いてGJICの程度をCx遺伝子導入前後で比較した.4)制癌剤感受性試験:制癌剤docetaxelの感受性をCx遺伝子導入前後で比較した.5)GJIC阻害剤による感受性の変化. [結果]食道癌培養細胞株KE-10はいずれのCxとMDR遺伝子ならびに蛋白の発現を認めず,dye transfer assayにてもギャップ結合を介する細胞間相互作用(gap junctional intercellular communication,以下GJICと略記)も全く認めなかった.そこで同細胞株にconnexin(Cx)32遺伝子をtransfectした.Cx発現細胞は良好なGJICを発揮し,親細胞に比べ30%以上の殺細胞効果増強を認めた.次にGJIC阻害剤を併用すると,先に認めたCx発現細胞における感受性増強効果は減弱し,親細胞と同等の殺細胞効果しか認めなった. [結語]食道癌のdocetaxel感受性には,GJICが深く関与していることが示唆された.
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