研究概要 |
細胞を安定化したまま保存温度を低くできる抗氷核多糖類を用いて肺の保存実験を行った.肺保存液としてKrebs-Henseleit(K-H)液を用いた.K-H液に100μg/mlとなるようにBacillus thuringiensis由来の抗氷核多糖類を加えたものをAFP液とした.250-300gのWister系ラットで心停止後、心臓と肺を取り出し,次の6群に分類した保存法でそれぞれを保存した.trypan blue排泄・ATP,LDHによる細胞活性・病理所見による肺損傷など保存肺の組織活性を検討した. 1.4℃K-H液で1時間保存(1群) 2.4℃K-H液で72時間保存(2群) 3.-3℃K-H液で72時間保存(3群) 4.4℃AFP液で1時間保存(4群) 5.4℃AFP液で72時間保存(5群) 6.-3℃AFP液で72時間保存(6群) (各群n=4) 結果 細胞ATP,LDHの結果は1-6群の順に,肺ATP(μmol/mg):758.0±113.5,172.5±28.8,117.1±92.5,779.0±139.2,89.4±5.8,42.3±32.3,肺LDH(IU/g):13.6±5.0,11.9±8.0,17.0±13.5,12.4±8,1,10.1±4.0,6.9±3.9であった.肺ATPで-3℃保存群は4℃保存群に対し有意に低下していた.抗氷核多糖類添加の有無については,-3℃保存群,4℃保存群ともに有意差がなかった.同様にtrypan blue排泄能の低下・細胞浮腫などの細胞障害は-3℃保存群で4℃保存群に比べ強かったが,抗氷核多糖類添加の有無については差を認めなかった.K-H液をベースとした場合,抗氷核多糖類添加による保存効果は少ない.K-H液自体が多量の糖を含み抗氷核多糖類添加の効果を弱めている可能性がある.現在,保存液を糖分を含まないEuro-Collins液にして実験を追加している.
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