研究課題
心臓移植において、近年のドナー不足の問題は深刻化している。そこで、新たなドナー供給源として、心停止ドナー(Non-Heart-Beating-Donors=NHBD)が注目され、臨床応用にむけ研究がなされている。しかし、常温虚血心の移植後心機能が不明であるため、いまだ臨床応用されていない。今回の研究では、心停止ドナーからの心臓移植の可能性を探ることが目的であるが、今年度は、虚血心に対する蘇生としての調節再潅流の方法につき検討を行い、標本数の蓄積を行った。心停止ドナーモデルとして、人類と冠状動脈などの解剖学的構築が類似しているブタ(20kg)を使用し、呼吸停止による心停止後、30分間常温虚血に曝した。ドナー心を摘出し、今回我々が考案した持続調節再灌流装置により、調節再灌流を行った。その後、血液による再灌流を持続的に行い、心拍動下にレシピエントに同所性に心移植を行った。具体的には、心筋保護液の種類、再潅流法(時間、量、温度など)について、移植後心機能、再灌流中の心筋代謝、心筋浮腫、心筋逸脱酵素を経時的に評価することにより、至適再灌流方法を検討した。結果は、至適調節再灌流方法として、4:1blood cardioplegiaを用いた場合、再灌流時間は20分、再灌流圧は40mmHg、再灌流温度は20℃で行った場合、もっとも移植後心機能が良好であった。しかし、移植後の心機能の回復率は約60%であった。来年度は、今年度検討を行った至適再灌流方法を用いて、慢性期の評価、また虚血後再灌流障害を軽減し移植後心機能の改善しうる薬剤を添加し評価を行うことにより、臨床応用への実現に向け、実験を重ねる予定である。