研究概要 |
まず非小細胞肺癌における包括的遺伝子診断を行った.切除肺腫瘍組織を用い,p53及びK-ras,EGFRにおける遺伝子変異を検索した.また,定量的RT-PCRにより,HAUSP,ING1b,CD9,CD82,E-cadherin,TS,DPDなどの遺伝子発現量を定量した.そして免疫組織化学法により,p53,mdm2,CD9,CD82,E-cadherin,TS,DPD,VEGF-A,VEGF-Cなどの蛋白発現,腫瘍増殖能(Ki-67標識指数),腫瘍内血管新生などを評価した.その結果,病期別にみると,VEGF-A発現,VEGF-C発現,E-cadherin発現など,血管新生または癌転移に関わるものが,早期肺癌における予後不良因子であることが認められた.一方,進行期肺癌では,腫瘍増殖能とTS発現がそれぞれ予後不良因子であることが示された.そして,5-FU系抗腫瘍剤が投与されたTS陰性腫瘍群は,進行期肺癌の中でも有意に予後良好であることが認められた(Br J Cancer 2005).このことは,たとえ進行期肺癌であっても,有効な化学療法を含めた集学的治療(オーダーメイド治療)の有効性が示されたものである.現在我々は,TS低発現かつDPD低発現腫瘍には5-FU系抗腫瘍剤投与を,またEGFR変異型腫瘍にはGefitinib投与を行い(Oncol Rep 2006),このオーダーメイド治療の前向き試験を行っている.その結果,TS低発現腫瘍に対する術後UFT投与の有効性は前向き試験でも認められた.今後,TS低発現DPD高発現腫瘍に対するS-1投与の効果を追加検討してゆく. 更に,新規の癌関連分子マーカーの検索も目指し,cDNAマイクロアレイ及びプロテオミクスによる包括的解析も行い,Wntシグナルが肺癌のプログレッションに関わっていることを新たにみいだした(Oncogene 2004; J Clin Oncol 2005).
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