研究概要 |
肺の成長因子の1つであるKeratinocyte growth factor (KGF)を用い、肺及び気管支の再生誘導について検討した。肺実質の検討では成熟ラットにおけるKGFと肺上皮再生の関連を検討した。肺切除後の残存肺において、肺上皮細胞の増殖形態とKGFの発現動態を検討したところ、術後4日目に細胞増殖を示すPCNA陽性率が切除例で8.49±1.83%、非切除例で1.99±0.61%と有意差に増加をみとめ、KGFおよびKGF receptorのnormal rat肺に対する染色強度も術後4日目にそれぞれ切除例9.16±4.38%,22.96±13.61%、非切除例0.844±0.33%,0.91±0.30%と細胞増殖と相関がみられ、増殖細胞は肺上皮細胞が主体であった。このことより、肺代償性成長においてKGFが関与していると考えられた。次にKGF遺伝子を投与し、肺実質の細胞増殖形態を検討した。pKGF-FLAGとして作製したKGF発現遺伝子をKGF receptorを発現した成熟ラット肺切除モデルにelectroporationを用いて投与し、コントロール群であるpFLAG遺伝子投与群と比較検討した。PCNA陽性細胞はpKGF-FLAG投与群18.41%,pFLAG投与群11.75%と有意にKGF遺伝子投与群において増殖細胞が多くみられた。このことよりKGFによる肺上皮細胞の増殖誘導が証明され、KGFによる肺再生の可能性が示唆された。気管支再生に関しては、軟骨細胞をもちいてin vitroで検討した。軟骨細胞にreconbinant KGFを投与し、その増殖形態を検討した。KGF投与群は96391cells/well、非投与群は62381cells/wellとKGF投与群で有意に細胞増殖がみられた。このことより、KGFは軟骨細胞の増殖に関与するものと考えられた。
|