○ヒト不全心におけるREG蛋白の発現 2003年に奈良県立医科大学附属病院で心筋梗塞のため死亡した5名の剖検より心臓標本を得た。また、正常心臓標本を肺疾患剖検例より得た。心臓心筋梗塞の発症から剖検に至るまで時間は平均19日(2〜45日)であった。摘出標本は10%ホルマリンで固定し、7μmの切片を作製した。REG-1蛋白に対するモノクローナル抗体は1:250の希釈率で使用し、universal immunoenzyme polymer methodにてREG-1蛋白を免疫染色した。 結果、REG-1蛋白陽性心筋細胞は梗塞心の心房・心室両方において確認された。線維芽細胞・血管組織など心筋細胞以外では染色されなかった。強拡大で観察すると、REG-1蛋白は細胞質内で細顆粒状に観察された。一方、肺疾患剖検例における正常心筋細胞ではREG-1蛋白の発現は全くみられなかった。以上より、ヒトの梗塞心においてREG蛋白が発現しうることが示された。 ○ラット培養心筋細胞におけるReg遺伝子の発現 ラット心筋細胞(H9c2)を培養し、フィブロネクチンでコーティング処理したシリコンチャンバーに播いた。ストレックス社製の培養細胞伸展装置(ST-140)を用いて任意の伸展率・時間で伸展刺激を与え、細胞を採取しreal-time RT-PCR法で心筋細胞における遺伝子発現量を定量化した。結果、10%・15%の伸展率、1・3・6時間の伸展刺激を与えても心筋細胞におけるReg-1 mRNA発現はみられなかった。ただし、ANP・BNP mRNA発現様式も文献的に得られるパターンとは異なっており、培養する心筋細胞の種類・伸展条件などを今後いろいろと変えて検討してゆく必要がある。
|