研究概要 |
直接生体内で肺癌組織内の酸素分圧を測定することは困難であるが、酸素を取り込む臓器である肺に発生した癌に小型で細胞密度も少ない段階において、低酸素状態がどのように悪性形質の進展に関与するかを検討した。原発性非小細胞肺癌切除標本のホルマリン固定標本51例を用いてHIF-1α,VEGF,PTEN/MMAC1,p16の発現を免疫組織学的に検討した。HIF-1αの陽性例はごく一部の染色例も含めると陽性例は39例(76%)であった。大部分の症例では核染色が認められたVEGF陽性例は32例(63%)でありHIF-1α発現例に多く認められたが、両者の発現に相関は認められず、HIF-1αとPTEN/MMAC1の間にも負の相関は無かった。Pl6の発現は39例(76%)に認められ陰性例にはDNAのプロモーター部位に高メチル化が認められたが、HIF-1αとの発現との明らかな関係は認められなかった。また、ヌードマウスに移植したA549腺癌細胞の皮下腫瘤でpimonidazoleによる腫瘍内低酸素分布の検討では低酸素領域は腫蕩組織内に斑状に認められ直径7mm程度の腫瘤でも低酸素領域は認められた。In vitroで確認されている現象が臨床検体でどの程度確認できるかを検討した段階であるが、臨床検体では様々な機序が複雑に絡み合い、それらの機序がマスクされている可能性もあり、例えば、細胞密集→組織内低酸素→HIF-1αの発現増大→VEGF発現→血管新生のような単純な図式は成り立たない可能性もあるであろう。今回の研究で得られた結果をもとに今後関連遺伝子の発現を確認し解明を続ける予定である。
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