研究概要 |
今年度はEGFRの下流分子である。PTEN、PIK3CAの発現、PIK3CAの突然変異などにつき検討した。また、肺癌の転移リンパ節個数につき検討した。 1.原発性肺癌にてゲフィチニブ治療を受けた78例を対象とした。K-ras突然変異は7例(9%)に(G12C 3例、G12A, D, S, V一例ずつ)、PIK3CA変異は2例(2%)(E545K 2例)に、EGFR変異は44例(56%)(G719X 2例、エクソン19の欠失変異23例、L858R 15例など)に認められた。K-ras変異はEGFR変異のない腫瘍にのみ見出されたが、PIK3CAを有していた2例には同時にEGFR変異も存在した。EGFR発現レベルはEGFR変異を有する症例において有意に高かった(P=0.0075)。しかし、PIK3CAとPTENの発現とEGFR変異は関連していなかった。 2.現在の肺がんTNM分類においてN因子は転移リンパ節の解剖学的広がりによってのみ規定されているが、他の癌腫(大腸、胃、乳)では転移リンパ節の個数がTNM分類に取り入れられている。今回、肺がんにおける転移リンパ節個数と予後に関して検討した。非小細胞肺癌のうちND2a以上の郭清を行った289例を対象とした。pN0:190例、pN1:35例、pN2:64例、転移リンパ節個数は0個(A):190例、1-3個(B):63例、4-6個(C):19例、7個以上(D):17例であった。5年生存率は転移リンパ節0個:77%、1-3個:58%、4-6個:42%、7個以上:6%と有意差を認めた(p<0.0001)。多変量解析では転移リンパ節個数は年齢、腫瘍径とともに独立した予後因子であった(p<0.0001)。転移リンパ節個数は有用な予後因子であり、現在のTNM分類にさらなる情報を付加することが可能であると思われた。
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