研究概要 |
昨年度、培養実験系で用いたC6ラットグリオーマ細胞の野生株および耐性株をラット大脳基底核の左右にそれぞれ定位的に注入接種して脳腫瘍モデルを作成し、^<99m>Tc-MIBIが移植脳腫瘍においても多剤耐性モニタリングに有用なトレーサーであるかについて検討した。^<99m>Tc-MIBIによるオートラジオグラフィー法で腫瘍イメージングを行い、関心領域は腫瘍部(T)と対側灰白質(NT)に設定してT/NTを算出した。^<99m>Tc-MIBIは対側灰白質(NT)と比較してC6野生株および耐性株に有意に高集積し、^<99m>Tc-MIBIのT/NTは耐性株と比較して野生株で高値を示した。本腫瘍モデルにおいて第二世代の耐性克服薬(MS209,PSC833)を経口投与し、1時間後に^<99m>Tc-MIBI集積は野生株および耐性株のいずれも有意に増加した(p<0.01)。一方、正常脳組織では^<99m>Tc-MIBIの有意な集積増加はみられず、耐性克服薬による腫瘍組織における選択的な抗腫瘍薬(VCR)の集積増加が示唆された。次いで、移植脳腫瘍における耐性克服薬による治療効果の増強について^<14>C-メチオニン(Met)によるオートラジオグラフィー法とMIB-5 indexで評価した。VCR静注1時間前に耐性克服薬(MS209,PSC833)を経口投与し、VCR単独投与群および未治療群と比較した。Met集積およびMIB-5 indexはVCR単独投与群で無治療群と比較して有意に低下した。各耐性克服薬前投与群はMet集積とMIB5 indexがそれぞれVCR単独投与群の80%および70%までさらに低下し、耐性克服薬前投与により抗腫瘍薬の治療効果が増強された。^<99m>Tc-MIBIを用いた多剤耐性モニタリングに基づいて耐性克服薬の投与時期を決定し、抗腫瘍薬と克服薬を併用することにより治療成績の向上が期待される。
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