本研究は、我々がこれまで行ってきたアテローム血栓病変に関する病理組織学的研究および血液凝固線溶系変化に関する研究を継続・発展させることにより、本病変の基本的病形、病態の解明を計り、その成果をもとに臨床例における内膜切除術とステント治療のすみ分け、および両治療法のより高い安全性と根治性の確立を計ることを目的として遂行された。 以下の治験を得ている。成果については学会誌等に発表している。 1.手術標本および献体解剖例により摘出した頸動脈アテローム血栓病変の組織所見の検討 以下の事実を明らかにした。 1)頚動脈壁は、総頚動脈が弾性動脈、分岐部が移行帯、内頚動脈末梢が筋性動脈である 2)アテローム血栓は、弾性動脈より移行帯にのみに限局して形成をみる。 3)筋性動脈には一部の例外を除き伸展、形成をみない。 4)厚い板状石灰化変化は、アテローム斑と中外膜境界部に形成される。 以上の所見は、内膜切除術およびステント留置術の選択、手術手技を考える上で重要な情報となる。 2.手術および血管内治療前後の血小板凝集能の測定と臨床的意義 手術前および手術・血管撮影時に採血した血液の全血血小板凝集能の変化を計測、検討し、ヘパリン投与の有無および濃度・使用量による血小板凝集能との関連を分析した。得られたデータより、術前の抗血小板剤や、内膜切除術、ステント治療の際のヘパリン適正使用法についてプロトコールを作成し、臨床応用中である。 3.ヘパリンcofactor II(HCII)の基礎研究:HCIIは血管平滑筋のトロンビン関連因子の反応性を抑制することを明らかにした。アテローム血栓形成の機序を考える上で、貴重な結果と考えている。 4.頸動脈高度狭窄症例にみられる高次脳機能障害:診断法、および外科治療の意義につき、データの集積・分析を行い、新たな臨床課題として検討を遂行中である。
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