研究概要 |
本年度は,交付申請書提出時の内容に則し以下のことを検討した。 1)インターロイキン(IL)2及びIL-15の遺伝子の無細胞蛋白発現用ベクターへの組換えと蛋白の産生及び質の評価: IL-2,IL-15いずれも無細胞蛋白発現系において,高率に反応液の上清分画に組み換え蛋白が回収でき,蛋白C末にヒスチジンタグを付けることで,ニッケルカラムによる高純度な蛋白の精製に成功した。収量はIL-2において現時点で,120ugを1mlの反応系から精製できることが分かった。一方,無細胞蛋白発現系では糖鎖の修飾が起こらないが,脾細胞を用いた自作IL-2のin vitroでの投与により,脾細胞の活性化が得られ,自作蛋白が生物活性を持つことが判明した。来年度は,小動物用小型浸透圧ポンプを用いて持続的なインターロイキンの投与系を確立する。一方で,TNFRスーパーファミリーでは,sTNFRII,sFasの遺伝子のGL261への遺伝子組換えとクローンの作成が終了しているので,TNFαやFasリガンドのT細胞活性化や細胞死誘導への関与の解析に役立てる。 2)GL-261の皮下及び脳内への接種系の確立と腫瘍内浸潤Tリンパ球の解析: GL261の脳内及び皮下への接種で,脳内では1×10^5個,皮下では1×10^6個で腫瘍の生着が全例でみられた。また,腫瘍内浸潤リンパ球(接種後12日目)を磁気ビーズ法で精製し表面マーカーを解析した。いずれもCD8^+Tリンパ球で活性化抗原のCD25の陽性率は5%以下であり,他の腫瘍(MCA38やB16)の場合と同様であった。また,回収細胞数は,GL261がMHCクラスI陰性であるにも拘らず腫瘍重量1g当たり約5×10^5個程度を回収できることが判明した。 よって,次年度は,さらなるリンパ球の解析をサイトカインや可溶型TNFRスーパーファミリーの有無で検討し,論文執筆と最終年度の報告書作成を行う。
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