研究課題
基盤研究(C)
側頭葉てんかんにおいては、抑制系神経細胞の脱落がてんかん病態進行の主要な一因とされる。この減少した神経細胞を移植で補うことにより、その病態の進行を抑制できるのではないかと期待し研究を行った。微量のカイニン酸をマウス右側海馬に投与しモデルを作成、次いで移植を行った。移植組織としては、臨床においても使用可能となる可能性を重視し、まず培養神経幹細胞、骨髄由来の間葉系細胞で行った。培養神経幹細胞の生着率は低く、一部生着した移植片も神経組織への分化傾向は乏しかった。骨髄由来間葉系細胞では長期の生着が得られなかった。臨床使用への発展性は期待出来ないが、胎児脳組織の移植を行い、組織学的、電気生理学的検討を行った。胎生16日目の海馬を取り出し、処理により分散した細胞を移植した群と、単に細切のみの処置で移植した群(組織移植群)の2群で検討した。組織移植群は生着がよく、神経細胞の形態を示す細胞が多数認められた。細胞移植群は海馬周辺の髄液腔での生着は多く認められたが、海馬内の生着細胞は少なかった。移植片内に神軽細胞へ分化を示すDCX陽性が認められ、さらにGABA陽性細胞、VGluT1-2陽性のグルタミン系細胞へ分化した細胞も認められた。しかし、実際に移植細胞がrecipient側にneural networkを形成している所見は得られなかった。また神経細胞への分化傾向は同条件で移植されたマウス間でも一定の傾向はなく、個体間での差が大きかった。抑制系・興奮性神経細胞への分化については後者が優勢であった。このマウスでは高頻度に発作を繰り返すが、脳波結果の解析から移植群と対象群には有意な差は認められず、移植による発作抑制効果は認められなかった。神経移植による治療を考慮するためには高効率で抑制系細胞へ分化する様な手段が必要であり、やはり培養系細胞での検討が必須であると考えられた。
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Epilepsia 46 (2)
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