研究概要 |
Survivinは抗アポトーシス機能を有するとともに、核・細胞分裂にも関わるタンパク質である。我々は以前グリオーマにおいてSurvivin mRNAの発現が悪性度・治療抵抗性に関わることを報告した。故に、我々はSurvivinが悪性グリオーマにおける分子標的治療のターゲットになりうるものと考えた。我々は悪性グリオーマ細胞株U251MG細胞(p53,wild type)およびD54MG細胞(p53,mutant type)においてSurvivinを抑制すると、正常な紡錘体形成が阻害され、核・細胞分裂障害が起こり、異数倍体が多数生じることを発見した。次にSurvivinの抑制による放射線感受性への影響について検討した。late phase(第14日)では両細胞群とも放射線感受性の増加を認めたものの、early phase(第1〜5日)ではU251MG細胞においてのみ放射線増感作用が確認できた。これはp53の機能障害が、Survivinの機能障害と何らかの相互作用を示すものと考えられた。これらの結果から、Survivinは放射線感受性の見地から見た悪性グリオーマの分子標的治療のターゲットに成りうることが期待され、さらにp53がその治療効果に影響することが示唆された(論文投稿中)。 一方、我々は悪性グリオーマの臨床検体における蛋白レベルでのSurvivinの発現についても検討を行った。我々はSurvivinの細胞内における局在が、治療反応性に影響するのものと推測し、51例の臨床検体を用い、免疫染色による検討を行った。細胞内での局在を、核群(10例)、細胞質群(22例)、核・細胞質群(19例)の3群に分類した。生存解析の結果では、核・細胞質群は他の2群と比較し有意に生存期間が短く、核・細胞質両方においてSurvivinの発現を認める症例では、治療抵抗性が増すものと考えられた。
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