研究課題
我々はリン酸化Stat3が脳虚血巣で発現が亢進している事を見い出し報告した(Neurosci Lett, 303:153-156,2001)。そして免疫電顕による検討では、リン酸化Stat3発現細胞は全て神経細胞であり、しかも細胞膜破壊が見られる変性細胞である事を明らかとした。即ち脳虚血の際にはStat3が活性化して神経細胞死を誘導する可能性が示唆された。そこで本研究は、脳虚血という病的状態でのサイトカインシグナル異常と神経細胞死の関係を明らかとし、新しい脳卒中治療法の開発を目的としている。1)初代培養神経細胞や神経膠細胞を用いた機能解析初代培養ラット神経・神経膠細胞にStat3のwild form(St3W)やそのdominant negative form (St3F)をウイルスベクターを用いて強制発現させ、サイトカインシグナル機能を亢進又は抑制させた。神経膠細胞ではSt3Wを強制発現させると明らかに細胞死が誘導された。2)神経細胞とマイクログリアの共培養による両者の相互作用の検討脳虚血の際にマイクログリアは重要な働きをする事はいうまでもない。そこで初代培養神経細胞にウイルスベクターを用いて、St3WとSt3Fを強制発現させた後、マイクログリアと共培養を行い、ニューロン・マイクログリアの相互作用を検討した。その結果St3WとSt3Fを強制発現させるだけでは神経細胞死は誘導されなかった。しかしながら、St3WとSt3Fを強制発現させた後、マイクログリアと共培養させると、神経細胞死が促進された。3)ラット脳虚血モデルでの検討脳定位固定装置を用いてSt3WとSt3Fを発現するウイルスベクターをラットの線条体に注入し、St3WとSt3Fを強制発現させた。翌日中大脳動脈を閉塞させ、24時間後の脳梗塞サイズを検討した。その結果、St3WではSt3Fに比して明らかな脳梗塞サイズの拡大が見られた。以上よりStat3が脳虚血時に重要な働きをしており、更にマイクログリアが虚血性神経細胞死に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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