研究分担者 |
間瀬 光人 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (60238920)
梅村 淳 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00244567)
相原 徳孝 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00264739)
山田 和雄 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (90150341)
浅井 清文 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70212462)
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研究概要 |
MSP (myelencephalic-specific protease)はラット、ヒトの脳、脊髄白質に多く含まれ、特にオリゴデンドロサイト、マイクログリア、ニューロンに多く認められ、トリプシン様の活性を持つことから基底膜や他の細胞外マトリックス構成分を変成させoligodendrocyteの増殖、突起の伸展分化やミエリンの水解・代謝あるいは神経成長やシナプス可塑性などのremodelingに関与している可能性がある。昨年度までに、われわれは、小泉塞栓子法によるラット中大脳動脈閉塞虚血モデルを作製し、MSP mRNAの発現をin situ hybridization法によって確認した。MSPは梗塞周囲のペナンブラに相当する部位のオリゴデンドロサイトや脳梁、白質線維にそって特異的に発現し、損傷3時間後から発現がみられ、24時間から3日をピークに減衰した。MSP (mBSP)蛋白抗体を作製し蛍光二重染色を行うとmRNAと同じ細胞に発現しており、蛋白発現のピークは7日目にみられた(Mol Brain Res 126:129-136,2004)。また、ラット凍結脳損傷モデルでは、MSP mRNAは脳挫傷直下のオリゴデンドログリア,損傷部周囲の脳梁、白質線維に沿って損傷後7目をピークに発現していた。MSP蛋白蛍光二重染色にてmRNA発現細胞と一致して蛋白発現が同じく7日をピークにみられ、オリゴデンドロサイトのマーカーであるCNPase発現細胞とも一致が確認された。Western Blottingでは、19kD(3時間ピーク)と37,40,50kD(6時間と5日にピーク)の比重の異なるfragmentの発現がみられ、前駆型や修飾型などの存在が考察された(J Neurotrauma; 22:501-510,2005)。これらの結果から、MSPが脳虚血後の脱髄、オリゴデンドロサイトあるいはaxonの損傷修復(ミエリンの再髄鞘化や神経突起の成長)に関与する可能性が示され、細胞外にも発現がみられたことからMSPはミエリン関連蛋白や細胞外マトリックス蛋白のturnoverに関連していることが示唆された。白質線維の損傷に際しての発現をさらに分析するために、Marmarouらのラットびまん性脳損傷モデルを改良したモデルですでに我々は鍍銀染色とAPP染色で軸索損傷を組織学的に証明している(Restr Neurol Neurosci 16:9,2000)が、約20%の致死率であったことから、より再現性の高いfluid percussion injuryを用いたびまん性脳損傷を用いて、Dragonfly社のfluid percussion injury装置を実験室に設置することとした。本装置を用いてKitaらの方法(Int J Legal Med 113:221-228,2000)をもとに、ウィスターラット頭頂部に骨窓を開けてcentral fluid percussion(最大陽圧100mg、最大陰圧160mg)を加えることにより、くも膜下出血、脳梁や脳幹点状出血、脳室内出血を認め、電顕的に軸策損傷が観察されるびまん性脳損傷の作成が可能である。残念ながら、本研究の期間内には結果を出せなかったが、このラットを用いてMSPのmRNAおよび蛋白について発現を確認し、引き続き、MSPのliposomeを用いた脳室内遺伝子導入を進めた後、siRNAによる抑制による影響について検討する予定である。
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