本研究プロジェクトの達成目標は、中脳ドーパミン細胞の変性をきたすパーキンソン病に対する同細胞の再生・移植療法への応用の可能性を探るために、骨髄間質細胞(bone marrow-derived stromal cells)が有する(1)神経栄養効果と(2)神経分化誘導作用を明らかにすることにある。そこで、平成16年度は骨髄間質細胞が有する(1)神経栄養効果について、特にドーパミン細胞生存維持効果について主として培養実験を用いて検討した。以下に、その結果を要約する。 (1)ドーパミン細胞生存維持効果:骨髄間質細胞の培養から得られた条件培液は無血清培養におけるドーパミン細胞の生存を有意に促進した。また、神経毒である6-hydroxydopamineによるドーパミン細胞障害対する保護効果も培養下において証明した。 (2)移植胎児ドーパミン細胞に対する生存促進効果:胎齢14日のラットの中脳ドーパミン細胞をラットパーキンソン病モデルに移植した。この際、骨髄間質細胞由来の条件培養液で移植ドナー細胞を処置すると、対照群に比べてその生着率が有意に向上した。 以上の結果より、骨髄間質細胞はドーパミン細胞に対してその生存を促進させるなんらかの液生因子を産生、分泌していることが示唆された。今後、これらの液生因子の同定ならびに定量を予定している。
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