本研究プロジェクトの達成目標は、中脳ドーパミン細胞の変性をきたすパーキンソン病に対する同細胞の再生・移植療法への応用の可能性を探るために、骨髄間質細胞(bone marrow-derived stromal cells)が有する(1)神経栄養効果と(2)神経分化誘導作用を明らかにすることにある。当該研究期間中の研究成果を以下に要約する。 (1)神経栄養効果:骨髄間質細胞の培養から得られた条件培養液は、無血清培養下や神経毒6-OHDAにより惹起されるドーパミンニューロンの細胞死を有意に抑止した。さらに、同条件培養液はパーキンソン病モデル動物へのドーパミン細胞移植の生着率を有意に改善させた。また、骨髄間質細胞由来の条件培養液中に、ドーパミン細胞に対して神経栄養効果を示すFGF-2、BDNF、GGDNFが存在することをELISAにより証明した。 (2)神経分化誘導作用:マウス胚性幹細胞(ES細胞)を骨髄間質細胞と共培養することにより、神経細胞への分化が有意に増強されることをTuJ1免疫染色により証明した。さらに、中脳ドーパミン細胞への分化に関与する分子であるFGF8とsonic hedgehogを分化誘導中に添加すると、全神経細胞中の約40%がTH陽性となり、同細胞培養液中にドーパミンが分泌されていることをHPLCにより証明した。 本研究により、骨髄間質細胞はドーパミン細胞に対して神経栄養効果を発揮し、ES細胞に対して神経分化誘導作用を示すことが証明された。
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