研究概要 |
特発性正常圧水頭症(INPH)と診断された10例の髄液と対照10例の髄液中の蛋白を二次元ポリアクリルアミド電気泳動にて分離した。次に銀染色を行い蛋白スポットを可視化し、2D-PAGE画像を作成した。対照と比較してINPHでは13の蛋白スポットに発現の増減を認めた。これらの蛋白スポットを質量分析し、8個の蛋白が同定された。すなわち、leucine-rich alpha-2-glycoprotein(LRG),alpha1-antichymotrypsin(ACT),angiotensinogen,apolipoprotein D(apo D),apolipoprotein J(apo J),haptoglobin,Serum Albumin,alpha1 microglobulinである。この中でLRGはINPHに特異的に増加発現していた。 次いでLRG1の抗体を作製し、髄液中のLRGを定量した。INPH患者15例(男性9例、女性6例、平均年齢71.7±2.4歳)と対照患者12例(男性7例、女性5例、平均年齢64.3±2.9歳)で、髄液中LRG1濃度はProtein Detector ELISAキットとLRG1抗体を用いて測定した。INPH患者の髄液中LRG濃度の平均値は113±6.46pg/100ul、対照患者の髄液中LRG1濃度の平均値は46.3±3.26pg/100ulで、INPHにおいては対照に比較して、髄液中LRG1濃度の平均値が有意に高値であった(Students t-test P<0.01)。髄液中LRG1の測定はINPHの補助診断になり得ると考えられる。
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