骨髄間質細胞(BMSC)は、神経栄養因子の分泌作用や中枢神経組織内の遊走作用などを有することが知られている。今回の研究では移植されたBMSCが神経損傷の機能的回復をきたしえるか否かについて検討した。Ratより採取したBMSCをrat大脳の左barrel cortexに作成した凍結病変に移植することによる治療効果を、whisker-to-barrel cortex知覚経路における中継核の局所glucose消費率(1CMRglc)を測定することによって検討した。BMSCあるいはphosphate-buffered saline(PBS)を凍結病変作成1時間後にその境界部分に移植した。手術から3週間後に、右whiskerを刺激しながらdeoxyglucose法をもちいて1CMRglcを測定した。塩基性fibroblastic growth factor(bFGF)は免染を用いて検討した。その結果、移植したBMSCは大脳凍結病変の周辺部で脳浮腫領域に一致する部分に遊走していた。BMSC群では、凍結病変の壊死の有意の縮小(P<0.05)と左視床部のVPM核の2次的変性が軽減していた。bFGFは病変周辺部のgliaに、特にBMSC群で発現していた。1CMRglc測定結果は凍結病変は脳幹部の三叉神経核の代謝的反応には影響は無かったが、左VPM核とbarrel cortex周辺部の代謝的反応がPBS群で消失していた。1CMRglcの左/右比はPBS群に比べBMSC群ではVPM核とbarrel cortex周辺部の両方で、それらの比率が有意に改善した(P<0.05)。これらの結果から、BMSC移植が病変部周辺のgliaのbFGF活性を賦活することによって損傷神経回路の1次的損傷と2次的損傷を軽減することによって、損傷神経回路の代謝的かつ機能的回復に役立つことが判明した。
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