研究課題/領域番号 |
16591464
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研究機関 | 明治鍼灸大学 |
研究代表者 |
田中 忠蔵 明治鍼灸大学, 保健医療学部, 教授 (80163541)
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研究分担者 |
樋口 敏宏 明治鍼灸大学, 鍼灸学部, 教授 (80218700)
梅田 雅宏 明治鍼灸大学, 鍼灸学部, 講師 (60223608)
青木 伊知男 明治鍼灸大学, 保健医療学部, 講師 (10319519)
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キーワード | MEMRI / AIM-MTRI / 一過性脳虚血 / 海馬 / グリア / Mn造影 / 通電刺激 / 心停止 |
研究概要 |
本研究は、静脈性投与の全身性Mn造影MRI(Mangaese enhanced MRI)と血液脳関門を開き頸動脈から大脳半球にMn造影剤を投与し、神経細胞の活動に伴うMnの取り込みから局所脳活動を造影するAIM-MRIによる新しい画像化技術を用いて、中枢神経系の機能評価や脳・脊髄損傷時の機能評価、神経再生の評価を行うことを目的とした。 1)海馬の機能評価では、単純およびグルタミン酸投与AIM-MRIと全身性Mn造影MRIの組み合わせから、AIM-MRIによってのみ海馬歯状回からCA領域のpyramidal cell layerに相当する細胞群が造影され、全身性投与MRIではpyramidal cell layerのみならず周囲のグリア組織の分布に一致して造影された。この手法により、神経細胞層がAIM-MRIで造影されることが示唆された。 2)AIM-MRIによるラットの単一ヒゲ刺激を行い、大脳皮質の一次ヒゲ感覚野に100ミクロン程度の分解能で機能カラムと考えられる構造が描出された。 3)一過性心停止モデルにより、一過性脳虚血により海馬CA領域の神経細胞が遅発性細胞死に陥ることが知られているが、この細胞壊死をMn造影MRIによりCA領域の造影がされないことを確認し、遅発性細胞死を画像としてとらえることができた。 4)4動脈結紮による一過性前脳虚血モデルにより、3)と同様の結果が得られた。 5)全身性Mn-MRIでは、海馬の歯状回からCA1にかけての造影は、投与後24時間で見られることが分かっていた。これを経時的に観察することによって、ほぼ6時間後に海馬采からCA2までが造影され、CA1と歯状回はそれ以降になる。しかし、後頚部への鍼通電刺激によって、投与後6時間で歯状回とCA1が造影されることを観察した。この結果、通電刺激が脳室からCA1領域へのMnの取り込みを促進することが明らかになった。今後、痴呆等による海馬機能の減退や海馬損傷に対して、感覚刺激が機能予後に良好な働きかけをする可能性を示唆するものとして、貴重な成果である。 6)一過性中大脳動脈閉塞モデルのラットを用いて、全身性Mn-MRIを経時的に行い、虚血超早期では虚血部の造影が行われず、これは脳損傷に伴う機能障害によると考えられた。一方、その後の経過から、10日後では、虚血病巣の周囲にMn造影効果が著しく見られることを確認した。この所見は、組織学的には虚血損傷に伴うアポプトーシスが生じている部位あるいはグリアの増殖部位に一致し、さらに詳細な解析中である。損傷に伴うグリア反応が機能予後を悪化させる報告があり、この部位の画像化は、今後機能予後の指標として役立つことが期待される。
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