研究概要 |
昨年度のin vitroの研究で有用性が判明したニューキノロン系抗菌剤4剤のうち、もっとも有用性が期待されるSparfloxacinを音響感受性物質とした時の抗腫瘍効果をin vivoで、特に生存率と腫瘍の抑制効果をマウスair pouch modelをもちいて検討した。実験は下記の手順により行った。 1.ニューキノロン系薬剤の濃度の調整 昨年の実験で音響感受性物質として最適であると判断されたニューキノロン系抗菌剤Sparfloxacinを0.3%DMFを溶解剤として0.2mM,0.1mM,0.002mMの3段階の濃度に調整した。 2.マウス背部Air pouchの作成 マウスの背部皮下に擬似関節腔を作成し、さらに3日後に以下の実験を行った。 3.超音波の至適照射条件の検討 Air pouch内へSarcoma180細胞1.5x10^7個と濃度を調整したニューキノロン系抗菌剤を混じて注入し、径30mm、高さ15mmの蒸留水を満たしたガラス管内にair pouch部のみを水没させ、周波数2MHz、出力5W/10Wの2種類で120秒間超音波を照射した。実験群は照射条件と薬剤濃度の組み合わせにより分類し、対照群とあわせて8群(各群20匹)で検討した。 4.結果 経時的に皮膚の色調、腫瘍の増大を観察したところ、皮膚の障害は生じなかったが、腫瘍の増大は薬剤の濃度によらず、いずれもほぼ同等の腫瘍の増殖が観察された。組織学的にも抗腫瘍効果は見られず、生存率にも優位さは見られなかった。以上からSparfloxacin存在下で超音波照射し抗腫瘍効果を得るには、さらに種々の改良が必要と判断された。
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