研究概要 |
骨髄より採取した間葉系骨髄幹細胞を培養系で増殖、分化させて骨軟部組織の外傷による欠損や疾病あるいは老化に伴う変性に対して組織の再生に利用する再生治療が本研究の基本にある大きな目的である。特に、生体の細胞が本来持っている生体内で移動する運動能の制御機構を間葉系幹細胞において解明し,その特異性を明らかにする事により、適正な場所に移動するための促進要因を明らかにする事を、本年度の目的とした。まず,体外において培養系で増殖させ目的とする分化形質の発現能を有する培養系骨髄幹細胞の確立を試みた。特にBSEや同種の血液接触をさける事は、再生医療の本質である事から自家のヒト血液を用いた培養系の有効性を解析した。当教室で腸骨の採取を必要とする手術を受ける患者さんからIRBの承認の基に骨髄液と血清を採取した。10人の培養が成功し,軟骨に分化する事,骨に分化する事を確認して,その増殖能を牛胎児血清(FBS)と自家ヒト血清(HS)で比較したところ、興味深い事にHSはFBSに比較してすべての細胞株で増殖刺激能が衰えている事はなく、むしろ増強している細胞株が確認された。この結果は統計学的検討によって明らかとなった。さらに、細胞の運動能に関してはHSの方が,FBSより増強効果を認める結果を得た。現在までにその作用は,骨髄幹細胞の増殖刺激活性として広く認められているfibroblast growth factorとは異なる結果を得ている。今後,運動能刺激活性の詳細な分子種の解明を行う予定である。
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