研究概要 |
本研究の最終目的は,骨髄より採取した間葉系骨髄細胞を培養系で増殖,分化させて骨軟部組織の外傷による欠損や疾病あるいは老化に伴う変性に対して組織の再生に利用する再生治療である。実際の治療において移植された幹細胞がそのふさわしい場所へ移動する事は組織再生において重要と考え,生体の細胞が本来持っている生体内で移動する運動能の制御機構を間葉系幹細胞において解明することを直接の目的とした。いままでに,ヒト培養系骨髄細胞を確立して,その増殖と運動能は牛胎児血清(FBS)よりも自家ヒト血清(HS)のほうが,高い活性をもたらすことを明らかにした。また,骨髄細胞を移植して軟骨再生を惹起する時の基質にはヒアルロン酸製剤が有効であるが,ヒアルロン酸のレセプターCD44の発現には関与してういないことが明らかとなった。さらに,細胞の運動能を惹起する低酸素誘導分子である自己分泌型運動因子AMFの発現様式を骨軟部腫傷において確認した所その蛋白発現よりはmRNA発現が転移に関係すること,また蛋白発現は分解による代謝で調節されていることが明らかとなった。本年は,膝関節の半月版の再生に周囲幹細胞の運動が必要であり,その機序にAMFの発現が関与していること,またそのAMFの結合蛋白にpoly(ADP-ribose)polymerase family-14が関与することが明らかになり,本課題の研究成果は運動器再生の担い手である幹細胞の運動における分子機構の解明に大きな役割を果たした。
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