研究概要 |
Polymethylmethacrylate(PMMA) bone cementは整形外科領域で広く使用されているが、cementに生体活性がないためbone-PMMA cement境界領域での固定性の低下が問題であった。そこで、MMAにアルコキシシラン化合物としてメタクリロプロピルトリメトキシシラン(MPS)を加え、PMMAに混入するカルシウム化合物として塩化カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウムを用いて生体活性化セメントサンプルを作製して、ビーグル犬の大腿骨で骨伝導能を検討した。水酸化カルシウム含有セメントは骨伝導能では優れていたが、力学強度は酢酸カルシウム含有セメントが優れていた。そこで、酢酸カルシウム添加セメントとconventional cementの二種類で円柱状のセメントピース(径6mm、高さ15mm)状の試料を作製し、ビーグル犬の大腿骨の長軸に直交する形で挿入し、3,5,8週で取り出し力学試験器を用いてpush out試験を行い生体内での力学強度を評価した。酢酸カルシウム添加セメントでは、3週から8週まで1.60MPa以上の値を維持していた。また、大腿骨の髄腔にセメントガンを用いてセメントを注入し、3,5,8週で取り出しマイクロCTで骨とセメントの結合状態を検討すると同時に、硬組織標本を作製し骨とセメントの結合状態を評価した。8週では皮質骨とcementの間に石灰化が確認でき、conventional cementでは10%以下にたいして、酢酸カルシウム添加セメントでは30%を超えていた。また、変形性関節症や関節リウマチ症例の大腿骨由来の骨髄細胞と酢酸カルシウム添加セメントを混入した実験では、細胞増殖速度にばらつきが見られた。セメントからのカルシウムイオンの流出が細胞増殖に影響を与えていた。
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