間葉幹細胞は優れた増殖能と多分化能を有し、再生医療の細胞源として魅力がある。軟骨再生医療を成功させるためには、軟骨分化能の高い間葉幹細胞を用意することが重要である。成人の各種間葉系組織から間葉幹細胞を分離し、その増殖能や多分化能、特に軟骨分化能がどの組織由来のものが最も優れているか、また軟骨組織をin vitroで作製する方法を検討した。 #1 海綿骨由来と骨髄液由来の間葉幹細胞の比較 膝手術の際に、脛骨から骨生検針を用いて海綿骨約100mg及び骨髄液2mlを採取させていただき、14日間培養後、接着細胞を比較した。得られた有核細胞数は海綿骨及び骨髄液由来のもので同等であったが、コロニー形成率は海綿骨由来のものが100倍高かった。増殖能、遺伝子発現、表面抗原、骨・軟骨・脂肪分化能に関しては同一ドナー間で差を認めなかった。海綿骨からは16人の全てのドナーの方から14日間で100万細胞以上採取できた。 #2 骨髄液、滑膜、骨膜、脂肪、筋肉由来の間葉幹細胞の比較 膝手術の際に、骨髄液、滑膜、骨膜、脂肪、筋肉を採取させていただき、間葉幹細胞を採取し、比較した。滑膜、骨髄液、骨膜由来のものは10回以上継代しても増殖能が維持された。in vitroで比較すると、滑膜由来のものが最も軟骨分化能が高かった。 #3 滑膜由来間葉幹細胞の至適in vitro軟骨分化条件 滑膜由来間葉幹細胞の至適in vitro軟骨分化条件を検討した。軟骨分化に促進的に作用することが予測される7種類のサイトカインを3つまで組み合わせて解析すると、BMP2、TGF-beta、デキサメサゾンの組み合わせで最大の軟骨塊が得られた。 #4 滑膜由来間葉細胞とコラーゲンゲルの複合体を用いたin vitro軟骨分化 滑膜由来間葉幹細胞を用いても、スキャホールド無しではin vitroで作製する軟骨組織の大きさには限界がある。そこでコラーゲンゲルとの複合体を用いて軟骨組織を作製する手技を検討した。10^8/mlの細胞密度でBMP2、TGF-beta、デキサメサゾンの組み合わせでカルチャーインサートを型として用いると、直径7mmのディスク状の軟骨組織の作成がin vitroで可能となった。
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