研究概要 |
関節リウマチの骨粗鬆症の原因として,病態そのもの、不動、治療で用いられるステロイドなどが考えられている。我々はRA患者の腸骨の組織形態計測から,退行期骨粗鬆症とは異なる海綿骨内の変化を報告した。今回はラット脛骨骨髄損傷モデルを用いて骨再生過程におけるグルココルチコイドの影響を分析した。モデル作成日をday0とし、メチルプレドニゾロン(以下、MPSS)100mg/kg/dayを3日間、8週齢雌ラットの臀筋内に注射(生理食塩水注射群をControl群とした)し、day1-14まで7つの期日で安楽死させ、脛骨を採取した。脱灰パラフィン切片を作成し、4μmに薄切し各種染色を行い、骨芽細胞、破骨細胞の挙動を組織学的に詳細に検討した。MPSSは有意にday7で新生骨形成量を有意に減少させた。Day10では、Control群で新生骨が減少しday14でほぼ正常骨髄に回復するのに対し、MPSS群ではday10以降有意に新生骨が残存していた。In situ hybridizationでの検討で新生骨周囲の骨芽細胞はI型コラーゲン、オステオポンチン陽性、オステオカルシン陰性であり、これは両群の差を認めなかった。また、新生骨周囲の破骨細胞の数やカテプシンK蛋白の染色性にも差を認めなかった。透過電子顕微鏡所見で、骨芽細胞の形態には差を認めなかったが、破骨細胞の波状縁がMPSS群で形成不全を呈していた。以上の結果から、MPSSはラット脛骨骨髄損傷モデルの骨再生過程において、骨形成と骨吸収をどちらも抑制した。そのメカニズムについては、さらなる検討を要するが、現時点では、MPSSは骨芽細胞の数を減少させ、破骨細胞の波状縁形成を抑制することで骨形成、吸収に影響を与えていることが示唆された。臨床的にステロイド使用患者の骨髄再生について有用な情報となりうると思われた。
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