本研究の目的は、ベッドからの起き上がるを介助する時に、生じる介助者の腰部椎間板内の圧迫力を力学的手法とビデオ画像による姿勢評価の両面から計測し、介助方法や福祉用具の使用の有無が、腰部椎間板に負荷する推定荷重量の違いを示し、効率的な介助方法を明示することである。対象者は、22名の健常成人女性である。介助者となる対象者の腰部と骨盤背部には、超音波式動作解析装置(Zebris)を装着し、介助中の3次元空間内の体幹、腰椎、骨盤の角度を計測した。また介助中の動作は、同期信号を入力しながらビデオ記録し、腰部負荷量の大きな動作を姿勢評価(RULA)を用いて評価した。介助課題は、ベッドに端坐位となった重度な模擬患者を立ち上げる介助方法であり、介助時に介助用ベルトの使用有無を比較した。結果:介助中の介助者の体幹、腰椎、骨盤の傾斜角度は、介助用ベルトを用いた課題が、用いない課題に比べて、有意(P<0.05)に可動域が小さく、力学的なアドバンテージとなる介助者と模擬患者とのモーメントアームも小さくなり、推定圧迫力が軽減した。一方姿勢評価結果においてもベルト使用した課題が、介助者の体幹前屈、回旋角度が小さく、腰部へのリスク変数が著しく免荷することが明らかになった。超音波式の3次元動作解析を用いて推定した腰部椎間板内圧迫力と姿勢評価による腰部リスク値の問には互い高い相関関係を示すことができた。すなわち、介助中の腰部負荷量を今回のように工学的な手法を用いた推定のほかに、臨床場面では、ビデオ画像から腰部負荷量の推定を簡便に行えることが示すことができた。
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