研究概要 |
1)血中リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)濃度の測定 ・対象症例: 健常者、各種関節炎(痛風、少数関節炎、変形性関節症、血清反応陰性脊椎関節炎)及び関節リウマチ患者 ・結果 関節リウマチ患者(n=127,0.92±0.09ug/ml(平均±標準誤差))は、健常者(n=90,0.56±0.01ug/ml)に比べ、有意(p<0.001)に高値であった。炎症性関節炎(n=5,0.4±0.04ug/ml)および変形性関節症(n=24,0.56±0.04ug/ml)と比しても有意(各々p<0.05、p<0.01)に高値であった。また、痛風(n=6,0.58±0.08ug/ml)および血清反応陰性脊椎関節炎(n=6,0.64±0.11ug/ml)に比しても高値の傾向にあった。従って、関節リウマチが疑われる関節疾患に対し、血中L-PGDS濃度が高値である場合には、関節リウマチである可能性が極めて高く、血中L-PGDS測定が関節リウマチの検出又は鑑別に有用であるものと考えられた。 2)L-PGDSの関節内の局在 関節リウマチ患者で、血中L-PGDS値が高値である理由を検討する目的で、関節リウマチ患者の関節手術切除標本を用いて、L-PGDSの関節滑膜での発現と局在を免疫組織化学的に検討した。その結果、滑膜内の細胞の細胞質にL-PGDS強陽性所見が認められた。現在、このL-PGDS陽性細胞の特性を検討中である。 以上より、関節リウマチ患者の関節滑膜の局所でL-PGDSが産生され、それが血中L-PGDSの高値に反映している可能性が考えられる。従って、関節リウマチ患者のL-PGDSは、病態を反映していることが推定され、今後の重症度別の血中や関節滑膜での発現を解析し、関節リウマチの病態と診断治療に応用していく予定である。
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