FGF受容体阻害薬SU5404により5種の滑膜肉腫細胞株のすべてで増殖が抑制された。5種の滑膜肉腫細胞株に対する1%血清添加培地でのIC50(μmol/L)はYaFuSSで11.4、HS-SY-IIで4.9、SYO-1が8.6、Fujiが25.3、1273/99で29.9であった。この時滑膜肉腫細胞ではFGFR3のリン酸化が抑制されていた。FGF受容体阻害薬に感受性のあるYaFuSS、HS-SY-II、SYO-1においてSU5402によりERK1/2のリン酸化が完全に阻害されたがp38のリン酸化は影響を受けなかった。ERK1/2リン酸化を担うと考えられるMAPKKの阻害薬であるU0216によっても滑膜肉腫細胞の増殖の抑制とERK1/2リン酸化の抑制が認められた。YaFuSS細胞株にSU5402を作用させると細胞周期のG1とsubG1分画が増加していた。ヌードマウス皮下で造腫瘍性を示すSYO-1細胞株をマウス背部皮下に接種し腫瘍を形成させた後、FGF受容体阻害薬PD166866を腹腔内に0.1mgあるいは0.5mg注射すると用量依存的に腫瘍増殖抑制効果が認められた。 滑膜肉腫細胞および滑膜肉腫腫瘍組織はneurofilamentやmicrotubule associated proteinなどのニューロン関連遺伝子を発現していた。滑膜肉腫細胞はレチノイン酸、レチノイドX受容体を発現しており、1部の細胞株でレチノイン酸結合タンパク1(CRABP1)を発現していた。全トランス型レチノイン酸(ATRA)投与により滑膜肉腫細胞において複数の神経関連遺伝子の発現が亢進すると共に形態が変化し増殖が抑制された。 FGF受容体阻害薬およびレチノイン酸が滑膜肉腫の治療薬となる可能性が示唆された。
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