研究概要 |
【目的】 酸化LDL受容体の一つであるレクチン様酸化LDL受容体の遊離型が関節リウマチ(RA)患者関節液中で増加しているか否か、疾患マーカーとなる可能性について検討した。 【方法】 京都大学整形外科で治療したRA患者、変形性膝関節症(OA)患者を対象とし、膝関節液を採取した。検体中の遊離型レクチン様酸化LDL受容体(sLOX-1)濃度を、抗LOX-1抗体を用いたELISAで測定した。 【結果】 (1)sLOX-1濃度を、RA膝関節液とOA膝関節液を用いて比較した。sLOX-1濃度は、RA検体で23.76±14.17ng/ml(n=31),OA検体で3.24±6.64ng/ml(n=42)であり、有意にRA膝関節液でsLOX-1濃度が上昇していた(p<0.001)。 (2)関節液中sLOX-1濃度と血清CRP値、赤沈値との相関について検索した。 膝OA患者(n=10)では、sLOX-1濃度はCRP、ESRいずれとも有意な相関は見られなかった。 RA患者(n=24)では、sLOX-1濃度はCRPと有意な相関を認めた(p<0.05)。ESRとは有意な相関を認めなかった。 【結論】 今回の研究結果からRA関節液でsLOX-1が上昇することが判明した。RA関節内ではプロテアーゼ活性が亢進しているので、RA関節軟骨細胞で発現が亢進しているLOX-1が遊離型となり関節液中に増加したものと考えられる。したがって、sLOX-1の測定がRAとOAの鑑別に有用であり、またsLOX-1濃度が血清CRP値と有意に相関していたことからRAの活動性を予測する新しい有望な分子マーカーとなる可能性が裏付けられた。
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