研究概要 |
(研究目的)圧迫性頚髄症(頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症など)を主体として、各神経根刺激による上肢筋の筋活動電位を測定し、得られた筋活動電位の振幅により神経根支配分布から脊髄運動神経の再構築および可塑性について検討中した。 (対象および方法)圧迫性頚髄症35例について、C5,C6支配とされている三角筋と上腕二頭筋から複合筋活動電位(CMAPs)を測定し、その振幅比の違いについて、脊髄誘発電位をもとに決定した責任障害高位別に検討した。また頚椎部神経鞘腫瘍では本研究の成果を術式選択に応用している。 (結果および考察)三角筋および上腕二頭筋ともその神経支配が責任高位により異なり、C4/5椎間に障害高位を有する症例ではそのC6髄筋障害に起因して、C5神経根優位に支配されている。本研究の成果の一部はすでに英文論文に掲載された。現在は、統計学的な有意差を証明するために症例を重ねている状況である。本研究結果は頚椎術後の神経根障害の臨床所見の重症度を決定する有用な仮説となり、また他の上肢筋の神経根支配分布についても検討し、頚髄症の特殊な病態(頚椎症性筋萎縮症や手指伸展障害を主とした頚椎症など)の解明も進行中である。また、現在までの症例数は5症例と少ないが、頚椎の神経根から発生した脊髄腫瘍の術式選択にも応用している。すなわち、神経支配の再構築が完成されているか否かを術中に判断可能であり、このような症例では当該神経根を切離しても術後に全く運動麻痺を生じることはなく、本研究が臨床的にも有用であることを示唆する結果を得ている。
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