1)椎間板ヘルニアモデルを用いて後根神経節(DRG)におけるnerve growth factor(NGF)の変化と疼痛関連行動について検討した。椎間板の髄核を脱出させて第4腰神経根に接触させたNP群、第4腰神経根のDRGを針で変位させたDisplace群、両方の処置を加えたCombination群、そしてSham群で比較した。Combination群において、術後7日までの期間で、他の群に比してより顕著なNGFの上昇と疼痛関連行動が認められた。これらの結果は、NGFの上昇が部分的に疼痛関連行動と関連すること、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の病態を研究するにはCombination群を用いて検討するのがより臨床に近いことを示唆している。 2)神経栄養因子のひとつであるbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)を疼痛(坐骨神経痛)の指標として、椎間板ヘルニアモデルのDRG(第4腰神経根)と脊髄(第4腰髄)における変化を検討した。DRG内のBDNF陽性細胞は、術後3日目で対照群と比較して明らかに増加し、その増加は小型細胞と中型細胞で顕著であった。脊髄では後角の浅層と深層で、術後3日目にBDNF陽性面積が明らかに増加していた。 3)上記2)の結果を基に、抗TNF-alpha抗体であるInfliximabによる変化を検討した。ヘルニアモデル作製時にInfliximabを投与した群、モデル作製翌日に投与した群、ともにDRGのBDNF陽性細胞数、脊髄後角のBDNF陽性面積の明らかな減少が認められた。2群間では、有意な差異は認められなかった。すなわち、ヘルニアモデルで惹起される一次、二次ニューロンでのBDNFの増加は、Infliximabにより抑制された。これらの結果は、抗TNF-alpha抗体が椎間板ヘルニアによる疼痛に対する有効な治療法となり得る可能性を示唆している^<3)>。
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